2019年度活動報告 安河内彩香

2018年度より清島アパートに滞在していた
絵描き・安河内彩香です。

2019年度は壁画制作・ワークショップ・展示会開催など、昨年度から続けてきた活動をさらに展開させられた一年だったように振り返ります。

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まず2019年度のはじまりは、フィリピンのミンダナオ島・ダバオオリエンタルにある『House of Joy(ハウスオブジョイ)』という児童養護施設で迎えました。設立から21年が経ち、今も恵まれない家庭環境にある子ども達が安心して生活できる場所として運営されています。

施設に2週間ほど滞在しながら、子ども達が日常目にする機会の多い貯水タンクに壁画制作をしました。

 

子ども達からのリクエストを受けて施設内で飼っている犬猫をデザインに取り入れたり、一部の子ども達にはペイントを手伝ってもらうなどして交流しながら生まれた作品です。
日本の支援者の方々への感謝のメッセージを込めた壁画となりました。

【 THANK YOU for your support 】
制作年月:2019年3月
場所:House Of Joy  Batobato, San Ishidro, Davao Oriental , Philippines

 

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また、昨年度から清島アパートを中心に行っていた“フィンガーペインティング”を発展させて、大きな紙に多人数でペイントするワークショプを開催しました。(参加年齢が5歳〜18歳と幅があったため、自由に抜けていいというルールでやっていたため写真は最後まで残っていた少人数で撮影しました。)

これまでは掌サイズのパネルをキャンバス として使用していたため、初めて行った大きな紙を用いてのワークショップに様々な反省点が挙がりました。
(下記参照)

・開放的になれる環境をつくるために、屋外で開催するべきだった。
・既製品のフィンガーペインティング用の絵具を使用したが、絵具を混ぜる際に
色が混濁してしまったため、絵具の改良が必要。
・絵具をチューブからそのまま手に乗せて使っていたが、出しやすいような工夫が必要。
・子ども達は各自のスペースを決めて描いていたが、隣の人とも交流してもらうには工夫が必要。

などです。

 

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また、時と場所は移り9月には別府市の餅ケ浜保育園にて壁画制作をさせていただきました。こちらの作品は同じく別府市を中心に活動している画家のかおなしまちすさんとの共同制作です。保育園からは浜辺が近いということもあり、海の生き物であるクジラを主役にしました。
子ども達の溢れるエネルギーを勢いよく飛び出す潮に見立てて描き、車道からもよく見える場所のため、目にした方が元気になるような壁画を目指して制作しました。

【 クジラのもっちー 】
制作年月:2019年9月
場所:餅ケ浜保育園(大分県別府市)

 

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また壁画制作に際して、保育園の園児達にもフィンガーペインティングのワークショップを体験してもらいました。

前回のフィリピンでの反省を活かして
・開放感のある半屋外での開催
・絵具に透明感が出るように、文具用のりを使用したフィンガーペインティング用の絵具を用意
・絵具はグループごとに透明カップに入れて配りやすいようにするなどの工夫をして実施しました。

印象的だったのは、児童だけではなく先生方がとてもいきいきと楽しそうに参加されていたこと。

今回発見した事として、フィンガーペインティングには“個々が役割を超えて参加できる”という点があります。色彩を視覚だけでなく、手や足の感触を通して体験するということを通して、現代生活においてあまり働かせることのないプリミティヴな感覚が刺激されます。またそのような体験を参加者全員で共有することで一体感が生まれます。

“教える側と教わる側”や“お世話する側とされる側”などの普段担っている社会的な役割を超えて場を共有できるのです。それらを先生方や参加してくれた園児の姿を通して見ることができました。

 

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またもう一つ、異なるワークショップとして“自分だけの絵本をつくるワークショップ”も数回開催しました。

これはまっさらな白い本に、色鉛筆やクレヨン、パステル、マスキングテープ、雑誌のコラージュなどを用いて自分の感覚を絵にし、そこに言葉を添えていくという内容のものです。
一枚の絵だけでは表現できない世界観が、何枚もの絵のレイヤーを作ることで見えてきます。

およそ2時間のワークショップで、制作後に参加者全員で作品と感想をシェアする時間をつくりました。

これらのワークショップに共通して私が意識していることは、“解放する”ということです。それは普段担っている社会的な役割や日々のルーティン思考、また気づかないうちに溜まっていく感情、眠っている感性そのものにおいて。

それらを解放することを意識して行う時間をもつことで、たとえ数時間のワークショップであったとしても日常生活に戻った時にとても楽になると思っています。

私自身、学生時代に教育心理学を学んでいたということもあり、絵を描くことを作品をつくるというところに限らず、人の心を癒したり、生活を豊かにするツールとして付き合っていきたいと思っています。

 

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そのほか、2度の展示会を開催しました。

2019年11月〜12月には別府市のCOTTON WOODにて、映像作家の椚あすみさんとの2人展を開催しました。

 

2020年2月〜3月には大分市のLife Gallery 花さんにて、水彩画を中心とした個展を開催しました。

 

また、2020年3月より年間を通して別府駅構内の別府銘品蔵にて作品の展示をしていただいています。

 

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最後に、2年間滞在した清島アパートですが、
予想以上にたくさんの方に支えて見守っていただきながら
こうやって制作活動を続けてこれていることを感じます。

山出さんをはじめとするBEPPU PROJECTのスタッフのみなさん、
これまで清島アパートに関わってこの場を作ってこられたみなさん、
別府の町に暮らす地域のみなさん、
陰ながら応援してくれていたみなさん、
そして清島アパートでであった作家のみなさん、

改めて、この2年間どうもありがとうございました。

そして今後ともよろしくお願いします。

 

絵描き

安河内彩香

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